高2の現代文の教科書に「山月記」が載っています。
これは、李徴(りちょう)という主人公が、詩人になることを願い、仕事を辞め詩作に耽るが上手く行かず、その野心が高じて虎になってしまうという話です。
そして、山で昔の友だちと出くわし、姿を隠したまま「どうしてこうなったのか」といった話をするのです。その中に味わい深い文章があるので、以下2つ紹介します。
「全く、どんなことでも起こりうるのだと思うて、深く懼(おそ)れた。 (略)
理由も分からずに押し付けられたものをおとなしく受け取って、理由も分からずに生きてゆくのが、我々生き物のさだめだ。」
「人生は何事をもなさぬにはあまりに長いが、何事かをなすにはあまりに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら・・・(略)」
この小説は漢語を多く取り入れた文章で難しく読みにくいのですが、人間を鋭く描写してあり考え深い。
虎になるというのが少し突飛だけれど、カフカの「変身」を連想したりすると更に興味深い。また、虎を病気的なことに置き換えると、ストーリーが身近になり捉えやすくなります。
高校生の時だったら、「難しいな」としか感じなかったけれど、こういった文を読んで面白さを感じるのは、私も歳を重ねてきたってことなんでしょうね。